土壌病害に対する抑止力評価方法と考え方
2005年から北海道農業研究センターを中核機関として実施された「土壌微生物群集制御による土壌病害抑止力誘導技術の開発」(先端技術を活用した農林水産研究高度化事業)において、岐阜県中山間農業試験場のトマト青枯病の汚染程度の異なる圃場を用いて詳細な試験が行われた。酸素電極にトマト青枯病菌、フザリウム病菌、ピシウム菌、バチルス菌、シュードモナス菌などを固定化して滅菌土壌と生土の応答を比較した。その結果、健全土壌では、善玉菌・悪玉菌の区別なく抑制しようとする力が働くが、発病土壌では抑止力が低下することが示された(峯村ら、2006)。
通常、土壌微生物群集は、一種の菌が独占状態となることを極端に嫌う。一般に優占種といっても土壌中で3%を超えることはなく、生態系は絶妙なバランスの上に成り立っている。電極上に一種類の菌が独占状態で存在している場合、土壌微生物群集は、善玉菌・悪玉菌の区別なく群集全体のバランスを保つために、これを排除・抑制しようとする力が働くと考えている(図2)。発病土壌においては、土壌微生物の数・量ともに低下し、多様性が失われ単純化しているために、抑止力が充分に働かなくなっており、容易に病原菌の侵入を許してしまう。
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